江戸の仇を長崎で…討ってはいけない

自分の子供が体格の大きな子供にかけっこで負けて、悔しいと泣いて帰ってきました。
あなたなら、どう声をかけてあげますか。

「あの子は体が大きいから勝ってあたりまえだ。お前は勉強で勝て」
あるいは「かけっこなんかで勝ったって偉くもなんともないわ。勉強して偉くなって見返してやんなさい」と慰めたりしていないでしょうか。
負けたという悔しさ、怒り、不全感を充分処理できず、抑圧したまま、別のことでその不全感を解消しようとする。
私も含め、誰でもよくやってしまう防衛の仕方なのですが、
このような防衛の仕方は、神経症的な考え方を発達させやすく、「ノイローゼ」を産みやすい傾向があります。

負けたら負けたでいい。
悔しくていい。
自分も体が大きくなったら、いつか勝てるかもしれない。
勝ちたければ練習し努力すればいい。
自分より速かった相手に対しては、恨みや憎しみではなくて、尊敬や賛辞を送ればいい。
そうシンプルに伝えましょう。
大事な、本当に大切な、若木(子供そして自分のこころ)を大きく太く育てるには、
育てる側の愛と努力も必要なのだと思います。

そのような話を座禅会の後の懇親会でしていましたら、
参加者のAさんが次のような経験談を皆にしてくれました。
Aさんには趣味があり、その趣味の会合に頻繁に出かけるそうです。
そこに身なりの良い紳士Bさんがいる。
その趣味でAさんはBさんより少しだけ上手なんだそうです。
Aさんに負けるとBさんは、
「私は何々大学の卒業で国家公務員になりアメリカの有名大学に留学して今は東京の一等地にある大手法人で働いているんだ」
と突然学歴自慢をしだした。
AさんはBさんの豹変ぶりに驚きながらも、まあ可愛いものだなあと思って何も言わず聞いていたそうです。
実はAさんも同じ大学出身で大学院まで出ている秀才でした。
本当にすごかったのは、心配した周りの人がそのことをBさんに告げた時でした。
Bさんは「そんなはずはない、どうせ君は地方の大学から大学院だけ東京に来て学歴をロンダリングしているのだろう」
と口走ったそうです。
もちろん事実ではありません。
自分が上でいたいという願望が彼の頭の中で真実を捻じ曲げてしまったのです。
こんな人が大手の法人で共同経営者を名乗って仕事をしているのか…
とAさんは呆れてしまったと教えてくれました。

功成り名を遂げたように見えても、これでは誰も彼を深く尊敬(愛)してはくれません。
仕事は利害関係ですからなんとかごまかせるでしょう。
しかし、長く一緒にいる家族、妻や特に子供はこの人を心から本当に尊敬し愛せるでしょうか。
想像してみてください。
その趣味の集まりでも、誰もBさんを相手にしなくなったそうです。

江戸の仇を長崎で‥‥決して討ってはいけません。

「善」なるものを求めていきましょう。
Bさんを批判していればすむというものではありません。
過ちに気が付いたら、勇気を出して改めていきましょう。
もちろん、私も含めて、です。
それが心の安定や深い安心感への近道なのですから。