神経科疾患の正しい理解のために

誰にでも起こりうる病気であり、正しい知識を持てば怖がる必要はないのです。

例えば、昨年度、東京都職員の病気休職の約2割が神経科疾患であり、休職理由の第一位となりました。病気に対して「一般的」と云う言い方が適切だとは思いませんが、誰にでも起こりうる、あえていえば風邪や発熱と同じように、非常に頻度の高いものであるということはお分かり頂けると思います。近年、特に増加傾向が著しくなっています。リストラ、人員削減による仕事量の増加等「ストレス」と無関係ではありません。
また誰にでも起こりうる病気であり、正しい知識を持てば怖がる必要はないのです。
恥ずかしいことでもなければ、怖いものでもありません。ましてや不治の病などでは決してないのです。
ここではいくつかの代表的な疾患を簡単にですが説明してみましょう。

[不眠症]

寝付けない、寝てもすぐ起きてしまうなどご自分の睡眠に満足できていない状態を言います。軽度のものであれば内科などで出される睡眠導入剤で改善しますが、原因としてうつ病や統合失調症などの精神疾患が隠れていることがあり、持続する場合には専門医の診察をお勧めします。

[うつ病]

抑うつ気分「最近元気が出ない、何もする気がしない」、睡眠障害「寝つけない」を主症状とします。中高年に多く、発症の契機として、職場の異動、職場内の人間関係、ライフイベント(引越しうつ病、結婚、死別)などを伴なうことが多いのです。内因性のうつ病は、適切な治療で回復するものがほとんどです。早めに受診して頂くことがなにより大切です。

[不安障害 (恐怖症・パニック障害・全般性不安障害・社会不安障害)]

不安を呼び起こす特定の対象がないにも関わらず、漠とした不安にいつもとらわれるもの。例えば、高所恐怖、閉所恐怖のように、特定の場面、対象により過度に不安や恐怖がおきて来るもの。電車やバスに乗ろうとすると動悸や過呼吸が出現するパニック症状もこの不安障害に入ります。他人にはこの苦しみが理解されないことが多く、ひどくなると外出すること自体が苦痛となり、社会生活そのものが著しく障害されることもある辛い病気です。

[強迫性障害]

強迫現象(手洗い、確認など)を主な症状とし自らもこれに悩んでいるものを言います。

[統合失調症]

精神疾患の代表的なものであり、1/100の比率で出現する頻度の高い疾患です。陽性症状(幻聴や被害妄想、意味不明の言動)に関心が向きますが、人格水準の低下「とっさの対応が出来ない」「簡単な仕事が出来ない」や閉じこもりといった陰性症状が、問題となることも多いのです。近年、その生物学的研究がめざましく進歩しており、適切な薬物治療でその多くが回復するといわれています。

[アルコール依存症]

「飲み過ぎ」とは、違うことをまず知らなければなりません。大きな違いとして、その強迫性、持続性を挙げることが出来ます。つまり、ただ「我慢しろ」というだけでは止められない、れっきとした「病気」なのです。生物学的研究からも証明されてきています。「事を大きくしないため」「みてみぬふり」「手助け」が結局病状を悪化させることもあり、真正面から病気と向き合う気持が何よりも求められます。

[認知症]

物忘れとともに判断力、理解力の低下が重要な症状です。従来認知症は、治療困難とされてきましたが、近年アルツハイマー病の治療薬(コリンエステラーゼ阻害剤)が開発され、治療可能な疾患になりつつあります。とくに、このくすりは初期の認知症により有効なため、初期の段階で診断を確定することが必要です。物忘れが気になりだしたら、専門家への受診を、お勧めします。