精神分析的精神療法(カウンセリング)について
年をとることへの不安、病気への不安、対人関係の不安、親との問題。生きていく時、様々な「不安」を感じない方はいらっしゃらないでしょう。逆に、不安を感じることはとても健康なことであるといえるでしょう。そして、その不安をやわらげたり解決しようとする時、人はそれぞれ固有の方法を取ります。ある人は立ち向かったりするかも知れませんし、またある人は避けてしまう傾向があるかもしれません。その解決法が、現実にややそぐわない方法で行われる時(神経症的解決法と呼ぶ人もいます)、症状として出現すると考えた人がいました。
フロイト Freud,Sigmund(1856-1939)です。
彼は、
- 意識:今気が付いている心の部分
- 前意識:今気が付いていないが、努力によって意識化できる心の部分
- 無意識:抑圧されていて意識化できにくい部分
という概念を唱えました。そして、無意識こそがその人の行動や時として症状の出現に大きく関わっていると考えたのです。画期的なことでした。
(東洋には古くからこうした考えがありました。多くの書物が自己中心的なものの見方、考え方を戒め、意識することなくいつもそれにとらわれ自由になれないでいる、我々人間の悲しさについて触れています。)
我々は、生きていく中で自分でも気が付かないうちに様々な「無意識=鎖」に縛られていることがあります。それは「親の価値観」であったり、「学歴」であったり、「良い子へのこだわり」であったり、「暴力」であったりするかもしれません。その「鎖」は、知らず知らずのうちに私たちを苦しめ孤独にしてしまうことがあるのです。この「鎖」は「今の自分に満足できない、好きになれない」「本当の自信がない」という苦悩も私たちにもたらします。
でも私は、こうした悩みや苦しみは決してマイナスではなく、真の自分を見つけるための大きな力だと思っています。なぜなら、こうしたことを考えるきっかけを、窮屈だった自分から変わるきっかけを、与えてくれていると考えるからです。
こうした、喩えて云えば自分を縛る見えない「鎖」が何なのか、自分が求めているものがいったい何なのか、時間をかけて考え、解決する道を探していく作業を、「精神分析的精神療法(カウンセリング)」と言います。