rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)の諸問題について

rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)について最新の知見をお話しさせていただきます。その登場から10年以上が過ぎ臨床効果が統計上明らかになってきています。結論から言えば、「画期的」ではないことがメタ解析(治療実績を統計処理したもの)で明らかとなっています。

①    一部のうつ病患者さんに有効性が確認されています。
②    ただし、電気けいれん療法には有効性で劣る。
③    さらには、的確な薬物治療にも有効性で大きく劣る。メタ解析により多少の差はありますが、前者が7-8割の方に有効なのに対して、4割程度、です。
④    再発率が高い。

費用対効果で薬物治療やカウンセリング、電気けいれん療法に大きく劣るのが現状です。
このため、現在rTMSの対象は、「既存の抗うつ薬による十分な薬物療法によっても、期待される治 療効果が認められない 中等症以上の成人(18 歳以上)のうつ病」と限定されています。
臨床研究が進み、安全性と効果が確立されれば当院でも導入を検討したいのですが、未だそこまで来ていないというところです。

前置きが長くなりました。ここからが今回の本題です。

来院される患者さんで、rTMSを「自費で」勧められた、「自費で」受けた、とおっしゃる方にしばしば出会うようになりました。しかも、「うつ病」にではなく、発達障害、注意欠陥多動性障害ADHD、アスペルガー障害、広汎性発達障害、自閉症スペクトラム障害ASD、に効くのだと言われ、高額(30万、40万)を請求されています。
日本精神神経学会は理事長名で、
「18 歳未満の若年者への安全性は確認されておらず、子どもの脳の発達に与える影響等は 不明です。発達障害圏の疾患(自閉症、ADHD、アスペルガー障害など)やそれに関連する症状、あるいは不安解消や集中力や記憶力の増進などに対する効果は、海外においても確認されていません。」 と強く注意喚起しています。
https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/Guidelines_for_appropriate_use_of_rTMS.pdf

現状の精神医学や臨床の力が及ばないことがこのような輩をのさばらせる最大の原因だと反省もしていますが、これは悩める人の弱みに付け込む行為ではないのか。高額でも効果やそのエビデンスがあればいいのですが、それがないのですから。
どうか気をつけてほしいと思います。